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【小林耳鼻咽喉科医院】 世田谷の耳鼻咽喉科 めまい 耳鳴り アレルギー性鼻炎 耳鼻科

日本人が開発したトランサミン

今日も晴れて気持ちの良いお天気になりましたね。

 

 

年末で喉の痛みや長引く咳で受診する方も多かったのですが

咽頭炎などの際に処方する消炎剤のトランサミンは

日本人が開発した歴史があります。

 

正式名称トラネキサム酸は

血液を溶かすプラスミンの働きを抑える作用があり

炎症を抑え、止血剤の他に美容分野でシミ対策としても使用されます。

 

 

 

 

トラネキサム酸が注目された研究として

分娩時の出血に対する止血効果についての大規模臨床試験があります。

 

ランセットに掲載されたこの研究は

分娩後出血の早期にトラネキサム酸を静脈注射することで

母体の死亡率が30%減少したという素晴らしい結果でした。

 

 

 

 

この薬により年間30,000人もの母親の命を救うことが出来ることは

非常にインパクトのある研究結果です。

 

 

 

 

この研究を主導した小児科医で

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のIan Robert教授は、

2005年から約五年間、交通外傷など多量の出血を伴うケースに

トラネキサム酸を投与し、死亡率や副作用の有無を調べました。

 

その結果トラネキサム酸を投与した患者群では

投与しない群と比べて死亡リスクが約一割低下し

副作用である血栓症が増えることもありませんでした。

 

 

 

 

自身が生まれた1960年代初頭に日本人科学者である

神戸大学医学部の岡本彰祐先生、歌子先生が

トラネキサム酸を開発していたことを知り、

2010年に開発者である岡本歌子先生を表敬訪問しました。

 

その時の様子が女性医局の記事になっています。

 

 

 

 

研究結果を聞いた歌子先生は

「社会に貢献する研究をする。そして人を救う薬を作ることが

彰祐先生の当初からの目的でありましたので、

今回の研究結果は彼も天国できっと喜んでくれるでしょう。」

とお話しされました。

 

 

 

 

岡本歌子先生は大正7年(1918年)に東京下谷に生まれ

昭和12年(1937年)に東京女子医学専門学校に入学

昭和20年(1945年)に慶應義塾大学に移り生理学教室の助手

昭和22年(1947年)岡本彰祐講師と結婚。一度流産の末

結婚2年後に娘を出産、娘の小学校入学の際には

自宅の庭を開放して「すずめの学校」と呼ばれる保育施設を設立。

働きながら子育てと研究生活を両立させて

昭和41年(1966年)神戸学院大学栄養学部教授となられました。

 

 

 

 

今のように託児所がない時代、

研究と子育ての両立は相当大変だったようで

時には赤ん坊を寝かせるために

睡眠薬まで飲ませたというエピソードもあります。

 

岡本夫妻の努力の甲斐があって

トラネキサム酸の止血効果が明らかとなり、

世界中の多くの人が恩恵に預かっています。

 

 

 

 

東京医科大学の入試の際、

女子受験者に不当な点数操作があったように

実際に臨床の場面で男性医師と同じように働くのは困難な現在

歌子先生のような前向きでひたむきな女性医師が増えてくれると

また将来の女性医師の地位向上につながるのではないでしょうか。

 

 

 

トラネキサム酸を処方する際には岡本先生のことを思い出しながら

自分も人のためになる仕事をして行く自覚を持って

これからも働きたいと思います。