【小林耳鼻咽喉科医院】 世田谷の耳鼻咽喉科 めまい 耳鳴り アレルギー性鼻炎 耳鼻科

PPPDとは?

今日はスッキリと晴れて、

かなり暑い一日でしたね。

 

 

めまいはその発症様式から

前庭神経炎などの急性めまいと、

メニエール病や良性発作性頭位めまい症(BPPV)

のような発作性めまい症状が

3か月以上持続する

慢性めまいに分けられます。

 

 

慢性めまいには

神経変性疾患によるめまいや

心因性めまいが含まれますが、

2017年、めまいの国際学会である

Barany学会は

持続性知覚性姿勢誘発めまい

(Persistent Postural Perceptual Dizziness, PPPD)

という慢性に経過する

機能性疾患を定義しました。

 

 

PPPDは以下の基準A~Eで定義される

慢性の前庭症状を呈する疾患です。

診断には5つの基準

全てを満たすことが必要です。


A.浮遊感、不安定感、

非回転性めまいのうち一つ以上が

3カ月以上にわたって

ほとんど毎日存在する 1)~3) 。


1.症状は長い時間

(時間単位)持続するが、

症状の強さに増悪・軽減がみられることがある。


2.症状は1日中持続的に存在するとは限らない。

 


B.持続性の症状を引き起こす

特異的な誘因はないが、

以下の3つの因子で増悪する 4)~5) 。


1.立位姿勢


2.特定の方向や頭位に限らない、

能動的あるいは受動的な動き


3.動いているもの、あるいは

複雑な視覚パターンを見たとき

 


C.この疾患はめまい、浮遊感、不安定感、

あるいは急性・発作性・慢性の前庭疾患、

他の神経学的または内科的疾患、

心理的ストレスによる

平衡障害が先行して発症する 6) 。


1.急性または発作性の病態が先行する場合は、

その先行病態が消失するにつれて、

症状は基準Aのパターンに定着する。

 

しかし症状は初めは間欠的に生じ、

持続性の経過へと固定していくことがある。


2.慢性の病態が先行する場合は、

症状は緩徐に進行し悪化することがある。

 


D.症状は顕著な苦痛、

あるいは機能障害を引き起こしている。


E.症状は、他の疾患や障害ではうまく説明できない 7) 。

 


【注】


1) PPPD の主症状には以下の症状が含まれる。


・空間認知の混乱や障害に伴う

非運動性の感覚(dizziness:浮遊感)

立位あるいは歩行時の

不安定な感覚(un-steadiness:不安定感)

 

・自分自身あるいは外界が揺らぐ、揺れ動く、

上下に揺れる、はずむという疑似運動感覚

(internal or external non-spinning vertigo:

内的(自分自身)あるいは外的(外界)な非回転性めまい)


2)症状は1カ月のうち15日以上存在する。

ほとんどの患者は毎日あるいは

ほぼ毎日症状を自覚する。

症状は1日の中で時間が進むにつれて

増強する傾向にある。

 

3) 誘因なく、あるいは急な動きによって、

症状の瞬間的な増悪が生じることがあるが、

全ての患者に生じるわけではない。

瞬間的な増悪だけではこの基準は満たさない。


4) 疾患が十分に進行すると、

誘因に曝露されなくても症状が起こる。


5) 基準Bの3つの因子すべてによる増悪を

経過中に認める必要があるが、

それらが同等に症状を増悪させなくてもよい。

 

患者は前庭症状の不快な増悪を

最小限にするために、

これらの増悪因子を回避する場合があり、

そのような回避が見られた時は

この基準を満たすと考えてよい。

 

a.立位姿勢とは、起立あるいは歩行のことである。


b.能動的な動作とは、

患者が自ら起こした動作のことである。

 

受動的な動作とは、

患者が乗り物や他人によって

動かされることである

(例:車やエレベーターに乗る、人ごみに押される)。


c.視野の大部分を占める視覚刺激でも

一部分への視覚刺激でも症状は誘発される。

 

全視野への刺激(例:行き交う車、

賑やかな飾り付けで埋め尽くされた部屋、

大画面に表示された画像)で誘発される

場合が大多数であるが、視野の一部への刺激

(例:本、コンピュータ、携帯用の電子機器)

であってもそれを見続ける場合は誘因となる。

 


6) PPPD を発症させる頻度の高い病態は、

末梢性または中枢性の前庭疾患

(PPPD 症例の25~30%)、

前庭片頭痛の発作(15~20%)、

顕著な浮遊感を示すパニック発作

または全般性不安(それぞれ15%)、

脳しんとうまたはむち打ち症(10~15%)、

自律神経障害(7%)である。

 

他の不整脈や薬剤の副作用など

めまい、浮遊感、不安定感を引き起こしたり

平衡機能に影響したりする病態は

PPPD の原因とはなりにくい

(合計で3%以下)。

 

PPPD を引き起こす病態の大半は

急性または発作性であり、

急性症状に続発して PPPD による

持続性の症状が始まったと患者は訴える。

 

しかし,全般性不安障害、自律神経障害、

末梢性または中枢性の変性疾患などが先行した場合、

発症時期を明確に同定できることは少ない。

 

全ての症例において

特定の先行疾患を同定できるわけではないが、

特に症状が緩徐に悪化している場合は

診断を再評価することが必要であり、

PPPD と診断確定するには

しばらく経過を追う必要がある。



7) PPPD は他の疾患や障害と併存することがある。

他の疾患が存在していても、

必ずしもPPPD の診断を除外するものではない。

 

むしろ臨床的判断によって、同定された疾患のうち、

患者の症状を最もうまく説明できる

主診断を決定すべきである。

 

 

 

診断がかなり難しいPPPDですが、

長く続くふらつき、めまい、浮遊感でお困りの方は、

ぜひ当院にご相談下さい。