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【小林耳鼻咽喉科医院】 世田谷の耳鼻咽喉科 めまい 耳鳴り アレルギー性鼻炎 耳鼻科

視覚のしくみと体内時計

今日は晴れて

気持ちいい一日になりましたね。

 

 

人はどのような仕組みで

物が見えているのでしょうか?

 

網膜から入った情報は

目の奥にある網膜の視細胞が

光刺激を信号に変換して

情報を脳に伝えて認識しています。

 

 

 

視細胞が光を感じ取るには、

オプシンというタンパク質と、

レチナールという色素でできている

視物質が必要です。

 

 

網膜には約500〜600万の錐体細胞、

1.2〜1.4億の桿体細胞があります。

 

 

桿体(かんたい)は薄暗いところでも反応し

錐体(すいたい)は明るいところで働き

赤、青、緑に反応するオプシンを持っています。

 

明暗に敏感な桿体細胞は

1光子(Photon)でも興奮しますが、

錐体細胞は100光子以上が必要です。

 

 

1999年、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者

ラッセル・フォスターは、

遺伝性の疾患で杆体と錐体を失った

全盲の87歳の女性に対して実験を行いました。

 

この女性に

部屋の明かりのスイッチが

切り替わったと感じたら

教えてくれるように指示しました。

 

女性は、

「何も見えないのだから無理だ」

と言いましたが、

その実験では何と全問正解で

不思議なことに脳は意識下において

完璧な精度で光を感知していました。

 

この実験からフォスターは

ヒトの目に錐体、桿体に加えて、

第3の光受容細胞があることを発見しました。

 

 

内因性光感受性網膜神経節細胞

(ipRCG)と呼ばれる

この受容体は、

明るさを感知するためだけに存在し、

その情報は脳内の視床下部にある

視交叉上核(しこうさじょうかく)

で処理されます。

 

視交叉上核近くのには松果体という

内分泌器官があります。

 

 

哲学者のルネ・デカルトは、

松果体を「魂のありか」と呼び、

物質と精神が松果体を通じて

相互作用するとしました。

 

視交叉上核は、近くの松果体と

協調して昼と夜を体内で認識する

サーカディアンリズムを制御しています。

 

 

フォスターの発見以来、

体内時計は脳だけではなく、

膵臓、肝臓、心臓、腎臓、脂肪組織、筋肉、

などあらゆる部分で独自の時刻表に従って働き、

ホルモンを放出する時期や、

いつ器官が最も忙しく働き、

最も弛緩するかを指示している

ことがわかってきました。

 

 

1950年代に

生体リズム調節に関与している

ホルモンであるメラトニンが発見されました。

 

脳が一日の長さを把握するのを助ける

働きをするホルモンです。

 

鳥類での渡りのタイミングや

季節性繁殖などの季節のリズム、

睡眠・覚醒リズムや

ホルモン分泌リズムなどの

サーカディアンリズム

の調整作用があります。

 

 

1962年の有名な実験で、

フランスの科学者ミシェル・シフレは

アルプス山脈の山奥に

約8週間こもりました。

 

日光も時計も、

時間の経過の手がかりとなるものが

何もない中で、一日過ごし

37日が過ぎたと推定した時点で、

実際には58日たっていました。

 

 

また短い時間の経過を測ることさえ

全く出来なくなっていて

自分の感覚で2分測るように言われると、

シフレは5分以上黙っていました。

 

このように時間を知る手がかりがないと

生体の日内リズムが変調を来します。

 

 

メラトニンの分泌量は

夕方になると増え、就寝中の

真夜中に最大になります。

 

人の場合、幼児期に分泌量が最大で

年を取るとメラトニンの産生が大幅に減少し、

70歳で産生されるメラトニンの量は、

20歳の量の約4分の1になります。

 

そのため高齢者では睡眠時間が

短くなる傾向にあります。

 

メラトニンは強い照明

(1000ルクス コンビニの店内など)

で、夜間であっても分泌量が低下します。

 

 

人間のサーカディアンリズムは

25時間の周期となっていますが

光や食事、運動などの同調因子により

24時間の周期にリセットされます。

 

 

スマホのディスプレイが発する

光に多く含まれるブルーライトが、

感光性網膜神経節細胞を刺激し、

体内時計を狂わせてしまう結果

寝不足だけではなく、糖尿病や心臓病、

うつ病、肥満の引き金になる可能性もあり

注意が必要です。