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【小林耳鼻咽喉科医院】 世田谷の耳鼻咽喉科 めまい 耳鳴り アレルギー性鼻炎 耳鼻科

日本耳鼻咽喉科学会 東京都地方部会に参加しました

梅雨がなかなか明けないまま蒸し暑い毎日が続きますね。

 

 

土曜日は診療後に日本耳鼻咽喉科学会 東京都地方部会に参加して来ました。

 

 

場所は京橋の明治製菓ファルマビルです。

 

 

多くの演題で日常臨床で問題となった症例の発表がありました。

 

「耳鼻科クリニックにおける難聴遺伝子検査結果」

赤坂虎ノ門クリニック 熊川 孝三先生

 

遺伝性感音性難聴の出生頻度は1-2人/1000出産で

先天性甲状腺機能低下症の1人/3000-5000出産と比べても高頻度となっています。

 

難聴遺伝子にはいくつかのタイプがあり、現在100種類程度報告されています。

 

 

大学病院だけでなく、クリニックでも遺伝子検査が出来るというのは

患者さんにとっても良いことだと思いました。

 

 

内耳の有毛細胞に生えている聴毛が音の振動で揺れると

電気信号が脳に伝わります。

 

内耳の有毛細胞の維持に必要なアクチン繊維は

細胞の形を決定している細胞骨格の一つで

アクチン分子が繊維状構造となり形成されています。

 

 

神戸大学バイオシグナル総合研究センターの上山健彦教授と

京都大学大学院医学研究科の北尻真一郎研究員らの研究で

遺伝性難聴1120人を対象に遺伝子解析を行い

現在まで知られていなかった遺伝子変異を来す2家系が報告されました。

 

これは直鎖状アクチン繊維の伸長に関与する分子の遺伝子である

DIA1内にみつかったものです。

 

さらにこの解析から難聴患者の病態を再現した

遺伝子操作マウスの作製に成功したという画期的な成果です。

 

日本の遺伝子解析レベルが相当高いことが実証され

今後の研究成果に期待が持てます。

 

 

 

「他院で末梢性めまいと診断されて当科に紹介となり、

当科入院中に呼吸原性心停止に至った一例」

あそか病院 耳鼻咽喉科 古川 傑先生

 

頭部MRIやCTで異常を認めないめまい患者さんの中には

脳幹の炎症である脳炎によるめまいが含まれます。

 

 

その中でBickerstaff型脳幹脳炎と呼ばれる難病があります。

炎症性自己免疫疾患で、意識障害、両側外眼筋麻痺、小脳運動失調を来すことが特徴で

4週間以内に症状が極期に達し、一過性の経過を示す疾患です。

 

ほとんど後遺症を残さずに治癒する場合と、

後遺症として複視、歩行障害などを来す場合があります。

 

発生数は約100人で、8割の例では上気道感染が認められ

7割の例では血中に自己抗体(IgG型GQ1b抗体)が検出されます。

 

めまいを来す疾患の中で鑑別診断として考えるべきと再認識しました。

 

 

 

「嚥下機能検査を機に多系統萎縮症(MSA-P)と診断された一例」

東京都保健医療公社江原病院 耳鼻咽喉科 木村 百合香先生

 

多系統萎縮症(Multiple System Atropy ; MSA)は

自律神経障害、錐体外路系、小脳系の3系統の病変が出現する難病です。

 

 

錐体外路症状(パーキンソン症状)には振戦、固縮、発声障害、

姿勢反射障害などがあり、これらの症状が目立つ場合には

MSA-Pと呼ばれます。

 

 

 

声帯運動障害を契機にMSAと診断された症例の報告で

まれな病気について勉強になりました。

 

 

 

 

「当科における即時膿瘍扁桃摘出術の検討」

東京都立広尾病院 耳鼻咽喉科 樋口 雄將先生

 

 

扁桃周囲膿瘍は扁桃腺組織のまわりに膿がたまる病気で

嚥下障害、開口障害を生じるため入院治療、膿瘍の切開と排膿が必要です。

 

穿刺、排膿を実施して軽快した例でも、3ヶ月以内に再発するケースがあり、

膿瘍が舌根部に近い場合や、穿刺を希望しない患者さんなどの場合に

入院してすぐに扁桃摘出術を行う場合もあります。

 

手術治療で嚥下障害などの症状が、比較的早く軽快するメリットがあります。

再発を繰り返す扁桃周囲膿瘍の場合には、

即時の手術治療も選択肢の一つと考えられます。

 

 

 

「呼吸苦をきたした咽喉頭カンジダ症の一例」

東邦大学医療センター大橋病院 耳鼻咽喉科 神山 和久先生

 

口腔カンジダ症は、口腔内に常在するカンジダ菌による感染症で

健常者では発症することはまれで、糖尿病や癌の治療など

体力が低下して抵抗力が落ちた際に発症します。

 

症例は高度の糖尿病があり、咽頭痛と嚥下障害、呼吸苦を主訴に受診、

入院治療を拒否して外来での内服治療を選択しました。

 

 

左が口腔内、右が声帯、喉頭の写真ですが、

カンジダによる高度の炎症所見が認められます。

 

 

食道内部にも広範囲に病変が存在しています。

 

 

2ヶ月間の内服治療によって症状が改善した所見です。

内服だけで改善したのは驚きでしたが、非常に良い結果だったと思われます。

 

 

多くの貴重な体験を共有できて有意義な会でした。

これからも積極的に勉強会に参加したいと思います。