【小林耳鼻咽喉科医院】 世田谷の耳鼻咽喉科 めまい 耳鳴り アレルギー性鼻炎 耳鼻科

手術の有害事象は医師の技術力不足が原因?

今日もかなり暑い一日でしたね。

 

手術における予防可能なヒューマンエラーを減らすため、

医療安全対策の構築などの取り組みが進められています。

その中で、手術による有害事象の半数以上は

医師の能力不足が原因であることが、

米国の前向き観察研究から示されました。

 

米・Baylor College of MedicineのJames W. Suliburk氏らが

JAMA Network Open(2019; 2: e198067)に発表しました。

 

 

研究責任者で同大学外科のTodd K. Rosengart氏は

「ヒューマンエラーは完全には避けられないと考えられるため、

医療では有害な転帰を減らすことに焦点を当て、

ヒューマンエラーのリスクを減弱するためのシステムが構築されてきた。

ただし、医師の能力不足(human performance deficiencies;HPD)や

認識の偏りにどのように対処するかについて、

医療スタッフへの指導に焦点を当てた取り組みは極めて少ない」と指摘しています。

 

 

今回の研究では、成人患者を対象とする教育病院3施設

(地方の外傷センター、退役軍人病院、大学病院)から、

2018年1月2日〜6月30日の6カ月間に行われた全ての手術、

カンファレンスで発表された合併症や死亡に関するデータを収集。

 

有害事象に関係するヒューマンエラーの特定と分類に役立てるため、

過去の報告をモデルにHPDを分類するツールを開発し、

①計画または問題解決②実行③規則違反④コミュニケーション⑤チームワーク−

の5つのカテゴリーに分類し、最も多いエラーの種類を判定しました。

 

 

6カ月間に5,365件の手術が行われ、

有害事象は患者182例に188件発生しました。

 

このうち106件(56.4%)でHPDの関与が認められました。

 

 

施設や手術の種類の間で発生頻度に有意差はなく、

HPDが関与した有害事象106件では、

1件の有害事象に複数のHPDが関わっていたケースもあり、

合計で192のHPDが特定されました。

 

HPDのカテゴリーの中で最も多かったのは実行のエラー(51.0%)で、

計画または問題解決のエラー(28.6%)が続きました。

コミュニケーションのエラー(12.5%)、

チームワークのエラー(4.7%)、規則違反(3.1%)も認められました。

 

下位分類では、実行のエラーにおける認識のエラー

(認識不足、注意不足、記憶力の欠落)が31.8%と最も多く、

計画または問題解決のエラーにおける認識の偏りが

19.8%でこれに続きました。

 

一方、システムに関連するエラー(ガイドラインの誤用など)は8.3%のみでした。

 

 

Rosengart氏は

「米国では年間約1,700万件の手術が行われている。

今回の結果や他の報告から、手術による有害事象の発生率を約5%と考え、

その半数がヒューマンエラーによるものと考えれば、

毎年約40万件の有害事象は予防できることになる」としています。

 

 

研究チームは次のステップとして、

他の大学病院や地域の病院でも同様の研究を行い、

外科治療の有害な転帰に対するHPDの影響を検討し、

今回のデータの一般化可能性を検証することを推奨しています。

 

 

日本でも同様の取り組みをすることで

合併症の発生頻度が現在よりも相当数少なくなると思われます。