【小林耳鼻咽喉科医院】 世田谷の耳鼻咽喉科 めまい 耳鳴り アレルギー性鼻炎 耳鼻科

医師の勤務時間

今日は寒さが戻って冬のような一日でしたね。

 

 

高橋まつりさんの過労死問題がマスコミに取り上げられてから

医師の過重労働もようやく問題になってきています。

 

 

全国医師ユニオンの残業アンケートによると、

診療科ごとに月の残業時間を集計した結果

救急科と産婦人科では1カ月の時間外労働(残業)が

月80時間とされている過労死のラインを

大幅に超えているとの報告でした。

 

耳鼻咽喉科の残業時間は70時間を超えています。

 

 

自分が勤務医時代に当直をした際の

代表的な病気のパターンを振り返ります。

 

 

一日の勤務を終えた5時過ぎから当直が始まりますが、

寝られない時のことを考えて、急いで早めに食事をとっておきます。

 

 

ゆっくり食後にお茶を飲んでいると

6時頃に救急外来から連絡があります。

 

「○○歳の男性、魚の骨が刺さったと救急要請があります。」

とのことで外来に走って降りて行きます。

 

 

たいていは見てすぐに取れる部位

扁桃腺に刺さった骨が確認できますが

 

 

中には食道の入り口に刺さった骨がある場合があります。

 

 

この場所は摘出するのが非常に難しく

内視鏡で鉗子を用いて魚骨が取れればいいのですが

嚥下反射が強い患者さんの場合には

じっとしていることが出来ないため

全身麻酔での摘出術となる場合があります。

 

中には酔っぱらってお酒を飲んでいる方も来院して

外来がお酒の臭いで充満してしまい、

看護師さん達はかなり迷惑そうです。

 

 

その後にはめまいの患者さんが

日中の激務に疲れた結果、めまい発作を起こして

嘔吐と歩行困難で救急車で搬入されて来ます。

 

 

めまいの状態が酷い場合には

帰宅することが出来ないので、緊急入院となります。

 

場合によっては脳出血によるめまいの可能性があるため

緊急で頭部MRIを実施する必要があります。

 

 

患者さんのご家族に

めまいで入院する必要があることを説明している最中に、

さらに「先生、病棟の癌の術後の患者さんが出血しています!」

と連絡があり、

外来での説明を中断して急いで病棟に駆け上がります。

 

 

病棟で輸血の指示やベットサイドでの止血処置を行って

ようやく外来に降りて

先ほどの説明の続きをしますが

その時には真夜中近くになっていて

中耳炎で耳が痛いというお子様が何人も外来で待っています。

 

 

こちらは正常の右側の鼓膜ですが、肌色に近い色です。

 

 

急性中耳炎の鼓膜は真っ赤になっていて

さらに貯留液がたまると鼓膜表面が膨張して

かなりの痛みが出ることになります。

 

 

こうした鼓膜を放置しておくと

場合によっては耳の周囲に炎症が波及して

乳突洞炎や脳に炎症が及んでしまうこともあるため

外来で緊急鼓膜切開術を行います。

 

お子様の場合、耳と鼻をつなぐ耳管が水平に近く、

耳との距離が短いため

風邪をひいた時にすぐに中耳炎となりやすくなります。

 

 

お子様の耳管にたまった細菌は

夜中に横になると中耳に移行して中耳炎になるため

真夜中に病院に来院されることがほとんどです。

 

これまで一睡も出来ずに勤務して

ようやく落ち着くのが夜中の3時や4時くらいです。

 

 

やれやれと思ってベットに入ってうとうとしていると

またも朝早くから救急車のサイレンで起こされます。

 

「先生、鼻出血の救急車が三台来ています!」

ということでまた急いで外来に降りていきます。

 

ご高齢の患者さんは高血圧、糖尿病、心筋梗塞などのため

血液をサラサラにする薬を飲んでいて

朝方に起きてから顔を洗っている最中に出血してしまいます。

 

こうした患者さんのほとんどの場合は

出血点が鼻の入り口近くにある

キーゼルバッハ部位で、その場で電気で焼く処置が出来ますが

 

なかには鼻の突き当たりにある

上咽頭に近い部位からの出血の場合があり

 

 

動脈性の出血はあっという間に血圧低下によるショックになるため

緊急で手術を行わないと命に関わります。

 

 

その場合には夜中に救急当番のオンコールの麻酔科の先生、

手術室の看護師さん達に連絡して

病院に集結してもらって手術を行います。

 

ようやく手術が終わるのがだいたい7時頃。

その時間には朝の病棟回診が始まるので

ほとんど一睡もせずに次の日の勤務に入ります。

 

 

今から思うとこんな激務の毎日を

自分でもよく頑張っていたなぁ・・・と感心しますが

今はもう二度と当直はしたくないですね。

 

 

大きな病院におかかりの際には

顔色が悪いお疲れ気味の担当の若い先生には

「先生当直明けですか?お疲れ様です。」

と一言優しいお声をかけていただけると

疲れも忘れて頑張れますので、是非ともよろしくお願いします。