今日は気温が下がって
かなり寒い1日になりましたね。
11月30日土曜日は
東京都耳鼻咽喉科医会に参加しました。
会場はベルサール新宿グランドです。
最初の講演は、諏訪中央病院 耳鼻咽喉科
増山 敬祐先生
「鼻アレルギーの診療 Up To Date」
近年花粉症患者さんの低年齢化が進んでいます。
スギのエキス製剤を
舌下免疫療法は、
従来の注射による免疫療法と比べて、
自宅で実施できる取り組みやすい治療法です。
皮下注射による方法では
アナフィラキシーショックをはじめ、
過度な反応を誘発する懸念がありますが
そのような副作用が少ない点もメリットです。
発表ではこれまでのデータが提示されましたが
有効率は約80%と
かなりの効果が期待出来ます。
舌下免疫療法の治療経験のある科
(赤い■)は耳鼻科のみでなく、
皮膚科や内科でも実施されています。
小児期に舌下免疫療法を開始すると
気管支喘息の発症を抑制できる
との発表がありました。
欧州11カ国(101医療機関)で実施された
ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験です。
2010年から2015年までの5年間、
5-12歳のイネ科花粉症(鼻結膜炎)患児
608例(実薬群300例、プラセボ群308例)
を対象とした研究で、
イネ科のオオアワガエリ(チモシー)
花粉舌下錠(Grazax)
またはプラセボを3年間投与し、
その後2年間観察しました。
主要評価項目は、
実薬またはプラセボへの割り付け後から
喘息発症までの期間(日数)です。
副次的評価項目は、鼻眼症状スコア、薬物スコア、
免疫学的変化(血清特異的IgE、IgG4抗体価)、
試験終了時(花粉飛散後2-6週)の
喘息症状や喘息治療薬の有無です。
結果は、主要評価項目(喘息発症までの期間)で
両群間に有意差を認めず
副次的評価項目に規定した
試験終了時の喘息症状の有症率や
喘息治療薬の使用率は、
実薬群で有意に低下しました。
鼻眼の症状については投与1シーズン目から
有意な効果が見られ、この効果は治療終了後
2年間を通じて確認されました
喘息治療薬の使用率は
舌下免疫療法2シーズン目から、
喘息症状の有症率は
舌下免疫療法終了後の4シーズン目から
有意な低下が見られています。
舌下免疫療法の
治療は11月までに開始することが推奨され、
遅くとも12月初めには投与を開始する必要があり
今シーズンに開始できない方は
来年6月以降に開始することになります。
舌下免疫療法の現状についての解説を聞き
大変勉強になりました。
続いて杏林大学 保険学部臨床検査技術学科
小林 治先生
「ウイルス感染の最新情報;
2020オリンピック・パラリンピック東京大会を前に
臨床医が知っておくべきこと」
来年のオリンピック・パラリンピック東京大会では
多くの外国人観光客が入国するため
海外から入って来る伝染性疾患の対策が必要です。
麻疹は麻疹ウイルス
(パラミクソウイルス科 Morbillivirus属)
による感染症です。
感染経路は空気感染のほか、
飛沫や接触感染などで感染力はきわめて強く、
麻疹の免疫がない集団に1人の発症者がいると、
12~14人の人が感染するとされています
(インフルエンザでは1~2人)。
世界で毎年2000万人が発症していて、
ウクライナ、インド、ブラジル、フィリピン、マダガスカル
などに多く発生している状況です。
麻疹ウイルスの感染後、
10~12日間の潜伏期ののち発症します。
前駆期(カタル期)には
38℃前後の発熱が2~4日間続き、
上気道炎症状(咳、鼻みず、くしゃみなど)と
結膜炎症状(結膜充血、目やになど)が現れます。
麻疹に特徴的なコプリック斑が
熱が下がった頃頬粘膜に認められます。
次いで発疹期には耳介や頸部に皮診が現れ
24時間以内に顔面、上肢、胸部に広がります。
回復期に皮診が融合して不規則な紅斑になり
色素沈着を来します。
予防接種が最も有効な予防法となります。
麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)の
ワクチン1回接種による免疫獲得率は93~95%以上、
2回接種による免疫獲得率は97~99%以上とされています。
麻疹患者さんに接触した場合、
72時間以内に麻疹ワクチンの接種をすることで、
発症を予防できる可能性があります。
風疹は風疹ウイルス
(直径60~70nmのエンベロープ(被膜)
をもつRNAウイルス)による伝染性の疾患です。
1800年代にはドイツ人医師 de Bergen が
Röethelnとして存在を確認しており
麻疹に似た症状を示すことから
「German measles(ドイツ麻疹)」と呼ばれました。
1841年にインドで大流行があった時に
初めてRubella(風疹)の名前がつき、
1866年にVealeが「Rubella」と呼ぶ事を提唱して
現在に至っています。
2~3週間の潜伏期間後に発症し、
発熱、全身性の小紅斑や紅色丘疹、
リンパ節腫脹(頚部、後頭部、耳介後部)が出現します。
発熱・発疹は3~5日程度で消退するため、
「三日ばしか」とよばれます。
予後は良好で、麻疹のように
発疹のあとが長く残ることもなく軽快しますが
成人では重症化しやすく、
発熱や発疹の期間が小児より長くなり、
関節痛が酷くなることが多いとされています。
妊娠20週頃までの女性に感染すると、
出生児が先天性心疾患、難聴、白内障や、
精神や身体の発達の遅れなどを来す
先天性風疹症候群に罹患する可能性があり
ワクチンによる予防が重要となります。
風疹に対するワクチン接種時期により
男性の一部の年代は免疫が備わっていない場合があります。
麻疹や風疹が疑われた場合には
抗体価を測定します( EIA 法あるいはPA 法)
水痘や流行性耳下腺炎に関しても
抗体価の評価方法を総括していただき
これまでの知識を再確認しました。
その他にもデング熱や腸管出血性大腸菌感染症など
についても解説がありました。
多くの知識を吸収できて大変勉強になりました。
これからも積極的に勉強会に参加したいと思います。