今日もかなり暑い一日でしたね。
手術における予防可能なヒューマンエラーを減らすため、
医療安全対策の構築などの取り組みが進められています。
その中で、手術による有害事象の半数以上は
医師の能力不足が原因であることが、
米国の前向き観察研究から示されました。
米・Baylor College of MedicineのJames W. Suliburk氏らが
研究責任者で同大学外科のTodd K. Rosengart氏は
「ヒューマンエラーは完全には避けられないと考えられるため、
医療では有害な転帰を減らすことに焦点を当て、
ヒューマンエラーのリスクを減弱するためのシステムが構築されてきた。
ただし、医師の能力不足(human performance deficiencies;HPD)や
認識の偏りにどのように対処するかについて、
医療スタッフへの指導に焦点を当てた取り組みは極めて少ない」と指摘しています。
今回の研究では、成人患者を対象とする教育病院3施設
(地方の外傷センター、退役軍人病院、大学病院)から、
2018年1月2日〜6月30日の6カ月間に行われた全ての手術、
カンファレンスで発表された合併症や死亡に関するデータを収集。
有害事象に関係するヒューマンエラーの特定と分類に役立てるため、
過去の報告をモデルにHPDを分類するツールを開発し、
①計画または問題解決②実行③規則違反④コミュニケーション⑤チームワーク−
の5つのカテゴリーに分類し、最も多いエラーの種類を判定しました。
6カ月間に5,365件の手術が行われ、
有害事象は患者182例に188件発生しました。
このうち106件(56.4%)でHPDの関与が認められました。
施設や手術の種類の間で発生頻度に有意差はなく、
HPDが関与した有害事象106件では、
1件の有害事象に複数のHPDが関わっていたケースもあり、
合計で192のHPDが特定されました。
HPDのカテゴリーの中で最も多かったのは実行のエラー(51.0%)で、
計画または問題解決のエラー(28.6%)が続きました。
コミュニケーションのエラー(12.5%)、
チームワークのエラー(4.7%)、規則違反(3.1%)も認められました。
下位分類では、実行のエラーにおける認識のエラー
(認識不足、注意不足、記憶力の欠落)が31.8%と最も多く、
計画または問題解決のエラーにおける認識の偏りが
19.8%でこれに続きました。
一方、システムに関連するエラー(ガイドラインの誤用など)は8.3%のみでした。
Rosengart氏は
「米国では年間約1,700万件の手術が行われている。
今回の結果や他の報告から、手術による有害事象の発生率を約5%と考え、
その半数がヒューマンエラーによるものと考えれば、
毎年約40万件の有害事象は予防できることになる」としています。
研究チームは次のステップとして、
他の大学病院や地域の病院でも同様の研究を行い、
外科治療の有害な転帰に対するHPDの影響を検討し、
今回のデータの一般化可能性を検証することを推奨しています。
日本でも同様の取り組みをすることで
合併症の発生頻度が現在よりも相当数少なくなると思われます。