今日は朝から寒くなりましたね。
先月はENT病診連携カンファレンス
に参加しました。
明石昌幸先生の
「子どもの花粉症と
Pollen-Food Allergy Syndrome」
食物アレルギーと
小児の花粉症について
詳しく解説していただきました。
食物アレルギーは経口感作により
成立すると考えられていましたが
2008年イギリスの小児科医Lackは
二重抗原暴露仮説
(dual allergen ezposure hypothesis)
を提言しました。
食物アレルギーの感作経路は
経口からと、経皮からの感作が
考えられます。
経皮的にアレルゲンに曝露されると
感作は成立しますが、
適切な量と時期に経口摂取された食物に対しては、
逆に免疫寛容が誘導されるという理論です。
アレルゲンの経皮感作は
日本では茶のしずく石鹸による
小麦アレルギーの発症が問題となりました。
サイトカインとは、
さまざまな刺激によって免疫細胞などから
産生されるたんぱく質で、
身体に侵入した細菌やウイルスなどの
異物を排除するための役割を担っています。
サイトカインには大きく分けて
インターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN),
腫瘍壊死因子(TNF)などがあります。
肺にアレルギーの抗原が入ると
インターロイキン33
インターロイキン1αが活性化し
リンパ節のヘルパーT細胞のTh2細胞を介して
IgE抗体を産生します。
また皮膚からの感作や腸管からの
感作も同様の免疫系が活性化します。
(oral allergy syndrome :OAS)とは
1987年Amlotらにより提言され
野菜や果物の摂食で口腔や唇の粘膜の刺激感
かゆみや時に腹痛、吐き気、
アナフィラキシーショックなどを生じる
一連の症候群です。
花粉症との関連があります。
ハンノキアレルギーでは抗体価が
高いほど口腔アレルギーの頻度が高く
スギでのOAS陽性率よりも
高率となっています。
花粉と果物など異なる物質であっても、
アレルゲンとなるたんぱく質の構造が
似ている場合があります。
ある花粉にアレルギー反応があると、
それと似たたんぱく質を含む果物に対しても
アレルギー反応が出やすくなります。
これを交差反応といいます。
OASでは交差反応として
カバノキ科花粉(シラカンバ、ハンノキ)は
バラ科果物(リンゴ、モモ、サクランボなど)やマメ科、
イネ科花粉(オオアワガエリ、カモガヤ)は
ウリ科果物(メロン、スイカなど)、
キク科花粉(ブタクサ、ヨモギ)はセリ科野菜など、
花粉と食物との関連性が明らかになっています。
花粉との交差反応性により
新鮮な果物や野菜を摂取した際に生ずる
アレルギー反応を
pollen-food allergy syndrome(PFAS)
と呼びます。
PFASの代表的な抗原として、
シラカンバ/カバノキ科花粉の主要抗原である
Bet v 1は、分子量が17 kDaで、
その一次構造の相同性や
生理活性(リボヌクレアーゼ活性)から
感染特異的蛋白質
(植物が病原体に感染した際に、
植物体内で生成されるタンパク質の総称;
Pathogenesis-related protein、PR protein)-10
ファミリーに属します。
このグループにはMal d 1(りんご)、Pra a 1(さくらんぼ)、
Pyr c 1(洋ナシ)、Api g 1(セロリ)、
Dau c 1(人参)、Gly m 4(大豆、主に豆乳)
が属し、
Bet v 1 に反応するIgE が果実由来の
PR-10 蛋白にも反応するため、
シラカンバ/カバノキ科花粉症の患者さんは、
これらの果物や野菜を摂取すると
口腔内過敏反応などが誘発されます。
野菜や果物に含まれる蛋白質は
加熱処理や酵素処理などにより消化されるため、
PFASの症状は口腔内に限局します。
Gly m 4(大豆、主に豆乳)は
熱処理の程度により完全に活性を
失わない可能性があり、
全身症状が出現する場合もあるため
注意が必要です。
食物アレルギーの治療として
アドレナリン筋肉注射
抗原除去
経口免疫療法
経皮免疫療法
舌下免疫療法
があります。
ユダヤ人種を対象とした
ピーナッツアレルギー研究では、
乳児期からピーナッツを摂取していた
フィリピンやイスラエルの小児の方が
摂取していなかった
アメリカ・イギリスの小児より
アレルギーの発症率が低い傾向がわかりました。
様々な知識を吸収できて
有意義な講演会でした。
これからも積極的に勉強会に参加したいと思います。