【小林耳鼻咽喉科医院】 世田谷の耳鼻咽喉科 めまい 耳鳴り アレルギー性鼻炎 耳鼻科

近視の有病率は?

最近ようやく暑さも和らいできました。

 

 

慶應義塾大学眼科学教室

坪田一男教授)の研究グループは、

東京都内の小中学生の近視有病率を調査し、

その結果をJAMA Ophthalmol

2019年8月15日オンライン版

に報告しました。

 

その結果近視有病率は小学生で約80%、

中学生で約90%と高く、

20年前の調査では43.5%で、

現在は有病率がかなり増加しています。

 

 

今回の調査対象は、

東京都の小学生689人と中学生727人、

計1,416人

(平均年齢10.8歳、男性55.9%)です。

 

近視は屈折値(等価球面屈折度数)で評価され、

-3.00D未満を弱度近視、

-3.00D~-6.00Dを中等度近視、

-6.00Dを超えた場合を強度近視

と分類します。

 

解析の結果、

小学生の近視有病率は76.5%

(95%CI 73.4~79.7%)、

小学1年生時点で

既に60%を超えていました。

 

 

強度近視有病率は4.0%(同2.5~5.4%)でした。

 

 

中学生の近視有病率は94.9%

(95%CI 93.3~96.5%)で、

3学年全てにおいて90%を超えていました。

 

強度近視有病率は11.3%

(同8.8~13.7%)でした。

 

 

近視の多くは角膜から網膜までの距離

(眼軸長)の伸長による軸性近視です。

 

眼軸長が伸びることで

近視が進行すると考えられます。

 

 

小児では成長に伴い

眼軸長が伸長しますが、

眼鏡によって正常視力まで矯正可能です。

 

 

 

文部科学省の疫学調査では、

裸眼視力0.3未満の低視力者が

1979年に小学生の2.7%、

中学生の13.1%、高校生の26.3%でしたが

2010年にはそれぞれ

7.6%、22.3%、25.9%と増えています。

 

 

坪田一男教授は

若い人に近視が多い理由として

バイオレッドライトを浴びる機会が

減ったためと推察しています。

 

 

これまでは、屋外で過ごす時間が長いほど

近視になりにくいことが知られていました。

 

 

バイオレッドライトとは、

紫外線の手前に当たる

波長360〜400nmの紫色の光で、

屋内で使われる蛍光灯や

LEDライトにはほとんど含まれません。

 

 

バイオレッドライトを浴びると

網膜にある遺伝子EGR1

(Early Growth Response 1)が活性化します。

 

この遺伝子は近視の進行を抑制する

遺伝子と考えられています。

 

 

13歳から18歳の子供を対象とした研究で

バイオレッドライトを通す

コンタクトレンズを

使用しているグループと、

通さないレンズを使用しているグループで

一年間の眼軸長の伸びを比較した調査では

バイオレッドライトありで0.14mm

バイオレッドライトを

カットしたレンズで0.19mm

 

 

有意差を持って

バイオレッドライトが当たったほうが

眼軸長の伸びが少なく、

近視の抑制効果があることがわかりました。

 

 

 

国立東京医療センター

で勤務していた際に同じ病棟で

働いていた眼科の根岸一乃先生が発表した

成人を対象とした研究

でも同様の結果が出ています。

 

 

強度近視に対して行う

屈折矯正手術である

有水晶体眼内レンズ術後の

長期間にわたる近視の進行を検討し、

2つのレンズの種類による

違いがあるかどうかを調べました。

 

使用したレンズはそれぞれ

「ARTISAN(R)

(Ophtec BV,Groningen,Netherlands)」、

「ARTIFLEX(R)(Ophtec BV)」。

 

2つのレンズは、

ともに虹彩支持型の有水晶体眼内レンズです。

 

バイオレットライトをほとんど透過しない

ARTISANを挿入した群

(AS群)11例11眼と、

バイオレットライトを透過する

ARTIFLEXを挿入した群

(AF群)15例15眼を対象としました。

 

成人強度近視患者に対し

屈折矯正手術である

有水晶体眼内レンズ挿入術を行い、

手術後5年間の近視の進行を

この2種類のレンズ群間で比較しました。

 

その結果、2種類のレンズ群間で

術後5年間の眼軸長伸長量に

有意差が認められました。

 

 

外来に受診する

小学生や中学生の患者さんも

メガネをかけているお子さんが

増えている印象ですが、

テレビゲームやスマホの

長時間視聴の影響の他に

バイオレッドライトを

浴びる機会が少ない事も

近視が進行するリスクとなっています。

 

 

これからは外で日光を浴びる時間を

意識して増やすようにすると

近視の進行が抑えられる可能性があります。