今日は晴れて春らしく穏やかな一日でしたね。
めまいや耳鳴で受診される患者さんでは、
睡眠障害でお困りの方も多くいらっしゃいます。
精神的に緊張状態が続くと脳が興奮状態となり、
安眠出来ないことが多くなることで
睡眠リズムが乱れてしまいます。
眠れないためにアルコールを
入眠前に飲んでいる方も多く
飲酒によりアルコール依存症となりやすい状況です。
不眠症の分類は
入眠障害 (寝付くまでに30分から1時間かかる)
中途覚醒 (睡眠途中で何度も目が冷めてしまう)
早朝覚醒 (朝起きる予定時間よりも2時間以上前にめが醒めて、
その後眠れなくなる)
熟眠障害 (十分な睡眠をとっても熟眠感が得られない)
の4つのタイプがあります。
治療は生活指導と薬物療法があります。
生活習慣の改善として、
定期的な運動と食事、過度の飲酒喫煙を控えるようにして
夕食後はコーヒーや緑茶、ココアや栄養ドリンクなど
カフェインを含む飲食を避ける事が大切です。
一日の覚醒と睡眠の時間を調節している体内時計は、
起床直後の太陽の光でリセットされますが、
朝のリセット時間が遅くなると、
夜に寝付くことが出来る時刻が遅くなっていきます。
そのため毎朝同じ時間に起きて、
太陽の光を浴びるようにする事が重要で
夜は無理に寝ようとはせずに
眠くなってから寝床に入って、
起きる時間は遅らせないようにします。
生活指導で改善できない不眠の方には
睡眠剤が処方されます。
睡眠剤には作用機序によりいろいろな種類があります。
GABA受容体作動薬
脳の興奮を抑えるGABA(ガンマアミノ酪酸)
の働きを活性化させることで
脳の活動を抑えます。
副作用でふらつきや脱力が起こる事があります。
メラトニン受容体作動薬
メラトニンは松果体から分泌される
睡眠と覚醒のリズムを調節している物質です。
脳内のメラトニン受容体に作用し、
体内時計を介して睡眠を促進します。
効果の発現に1-2週間かかります。
オレキシン受容体拮抗薬
オレキシンは視床下部で産生される覚醒を維持する物質で
起きている間に分泌量が増加し、
睡眠時に最も低くなります。
オレキシンの働きを阻害することで
睡眠に入りやすくなるようにする薬です。
長期間睡眠剤を服用している方が
急に内服を中止すると、
一時的に不眠症状が悪化することがあります。
睡眠剤は神経科の先生の指導の下、
症状に応じて量を調節する必要があります。
睡眠剤に頼らないで行う不眠治療には
自律訓練法があります。
眠くないのに無理に眠ろうとすると、
かえって心身の緊張が高まり眠りにくくなるため
自律訓練法などでリラックスして
眠くなってから寝床につくようにすることが大切です。
自律訓練法によっても効果がなく、
さらに不眠が続くこともありますが、
連日眠れない日が続いて休んだ気がせず
何事にも関心が薄くなって気力がないような場合には、
うつ病の可能性もあります。
健常者を対象とした研究では、実験的に睡眠を制限すると
不安や抑うつ、被害妄想が発生して
感情のコントロールを失ったり、
論理的な思考力、記憶力の低下が認められました。
うつ病が疑われる場合には、精神科の先生の協力のもと
軽症の場合には「認知の歪み」を直す治療として、
認知行動療法を行います。
詳しくはホームページの特別対談インタビューに
精神科の萬谷先生との記事を載せていますので
うつ病について知っておきたいことを参照して下さい。
不眠を改善するとめまいや耳鳴が軽くなることが多く
お困りの方はぜひご相談下さい。