【小林耳鼻咽喉科医院】 世田谷の耳鼻咽喉科 めまい 耳鳴り アレルギー性鼻炎 耳鼻科

マスコミ報道に思うこと

今日は晴れて気持ちの良い1日になりましたね。

 

 

TOKIOの山口達也さんの事件報道が

すさまじい広がりを見せています。

 

 

もしこれが医師が起こした事件であった場合は

どのように報じられたでしょうか?

 

 

恐らくメディアは学歴、フェイスブックを公にして

学生時代の同級生の証言、近所の評判など

あたかも犯罪を起こすのが当然だったような

ネガティブなコメントばかりを並べたてるでしょう。

 

 

テレビカメラが病院まで押しかけて

医師の自宅の敷地内に昼夜を問わずに

無許可で入って来ることも考えられます。

 

 

ネガティブな情報を連日大量に流され続けた結果

医師は社会的に抹殺されて

二度と社会復帰できないほどダメージを受けます。

 

 

多くの人は溜飲を下げるのでしょうが

本当に犯罪を犯した医師は

社会的に抹殺するほど極悪非道の存在なのでしょうか?

 

 

それまで先生に助けられた患者さんは

数多くいると思います。

 

そうした社会的な貢献度は全く無視されてしまい

医師の情報は間違っているかもしれないのに

ネット上にいつまでもそのまま残ってしまいます。

 

 

本人の反論がメディアに出ることはなく、

自分がその立場に立たされた時のことを考えると

恐ろしい気がします。

 

 

交通違反や泥酔しての軽犯罪などでも

普通の方ならメディアに名前は出ませんが

医師であると必ず名前、出身大学、家族構成や

勤務先の病院名が報道されてしまいます。

 

 

これまで医師が被疑者となった時に

メディアに対して医学会が反対声明を出したことがあります。

 

平成16年12月、癒着胎盤の手術時の大量出血が原因で

29歳の女性が死亡した

福島県の大野病院事件です。

 

主治医の加藤克彦先生は一人で手術をしていて

対応が非常に困難な癒着胎盤の処置に手間取り

出来るだけのことをしても出血多量で救命できなかった

大変気の毒な一件でした。

 

 

その2年後の平成18年2月

メディアがカメラ中継する中での異例の逮捕。

 

自分もこの時ニュースをネットで見ましたが、

全国の医師の間でも逮捕は不当という声が広がりました。

 

 

当時産婦人科学会が出した声明です。

 

このたび、日本産科婦人科学会の専門医によって行われた

医療行為について、個人が刑事責任を問われるに至ったことは

きわめて残念であります。

本件は、癒着胎盤という、術前診断がきわめて難しく、

治療の難度が最も高い事例であり、

高次医療施設においても対応がきわめて困難であります。

また本件は、全国的な産婦人科医不足という

現在の医療体制の問題点に深く根ざしており、

献身的に、過重な負担に耐えてきた

医師個人の責任を追及するにはそぐわない部分があります。

したがって両会の社会的使命により、

われわれは本件を座視することはできません。

平成18年3月10日

社団法人 日本産科婦人科学会
理事長 武谷 雄二

社団法人  日本産婦人科医会

 会 長 坂元 正一

 

 

逮捕後には過酷な取り調べを受け

お子さんが生まれる日にも立ち会えず

ご本人もかなり辛かったと思います。

 

最終的には平成20年に無罪判決となりましたが、

この事件の社会的影響は非常に大きく

産科診療の縮小や医師の削減、

婦人科希望の新卒医局員の減少

小規模病院の産婦人科外来がなくなるなど

現在もその影響がかなり残っています。

 

 

薬害エイズ事件など

被告が無罪判決となったにもかかわらず

医師からの反抗がないのをいいことに

特定の医師だけを攻撃するメディアが

報道スタンスを変えることがあるのか

注目していきたいと思います。