今日は晴れて気持ちの良い一日になりましたね。
不眠症の治療には精神的にリラックスするような
自律訓練法や睡眠導入剤が有効ですが、
その他に漢方薬を使う場合もあります。
高齢者では睡眠薬の副作用で
ふらつきや転倒のリスクがあるため
効き目が緩やかな漢方薬が比較的安全に使用できます。
不眠症の方には抗ストレス作用を示す成分である
柴胡剤が含まれた漢方薬が良く処方されます。
抑肝散(よくかんさん)
東洋医学で五行の中の「肝」の働きを抑えて
興奮や筋肉の緊張を鎮める漢方です。
1556年に出版された保嬰撮要(ほえいさつよう)
と言う中国の古い書物に記載されています。
小児のひきつけや夜泣きに有効で、
江戸時代の日本にも伝わり成人の不眠に対して使用されてきました。
薬理学的な作用機序としては
グルタミン酸系やセロトニン系の中枢神経系に働き
神経の興奮伝達物質の抑制作用があります。
加味帰脾湯(かみきひとう)
抑うつ傾向で神経が過敏な方、
くよくよ思い悩んで落ち込みやすい方
胃腸が弱く疲れやすい方の不眠にも有効です。
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
体力が中等度以下で冷え性や貧血、
神経過敏な方の不眠に対して処方します。
加味逍遥散(かみしょうようさん)
女性の更年期障害に有効で、肩こりで疲れやすく、
便秘傾向のある方の不眠や不安を軽減します。
柴胡を含まない製剤としては、
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)があります。
赤ら顔でお酒を飲むと顔が赤くなるタイプで、
イライラしやすい方に効きやすく
高血圧や鼻出血にも効果的な漢方です。
酸棗仁湯(さんそうにんとう)
心身ともに疲労していて、
疲れているのに眠れない場合に処方します。
特に高齢者で多く効果が見られます。
また半夏厚朴湯は消化管の蠕動運動を調節して
腹部膨満感や喉の詰まった感じを改善しますが
不眠にも有効なことがあります。
外来で長く続く咽喉頭異常感を訴える
女性の方に処方したところ
喉の症状が改善するとともに、
それまで数十年間続いていた不眠が治ったと
大変喜ばれた経験があります。
漢方薬のメリットとして、
本来の症状以外の身体バランスの調整作用により
全身の状態が改善する点があります。
今後も漢方についての知識を深めて
不眠でお困りの方のお役に立てればと思っています。