【小林耳鼻咽喉科医院】 世田谷の耳鼻咽喉科 めまい 耳鳴り アレルギー性鼻炎 耳鼻科

補聴器相談医 資格更新の講習会に参加しました

今日は昨日までの厳しい暑さに比べて

少し涼しい一日になりましたね。

 

 

土曜日は午後から日本耳鼻咽喉科学会 補聴器相談医

資格更新のための講習会に参加しました。

 

場所は東京駅近くの明治製菓ビルです。

 

 

東京都地方部会の学術講演会も同時に開催され

杏林大学医学部耳鼻咽喉科 齋藤 康一郎教授

の主催でした。

 

講演終了後に新進気鋭の齋藤教授と記念撮影

 

補聴器相談医の講習では、

耳鼻科医の中でも特に補聴器に造詣の深い先生方の

熱のこもった発表がありました。

 

始めに東京都補聴器キーパーソン

山川 卓也 先生の

「補聴器キーパーソン全国会議報告

ジャパントラック2015について」

 

 

 

ジャパントラック2015とは

日本における聞こえと補聴器の諸問題を抽出し

全難聴者の生活の質(QOL) の向上に寄与する

ことを目的に、日本補聴器工業会が2015年に

大規模な実態調査を行った報告です。

 

それによると

補聴器所有者の60%が、補聴器が期待していた通り

あるいは期待していた以上に良く動作しているとの

印象を持っているそうです。

 

ところが、フランス、イギリス、ドイツなどの

補聴器に対する全体的満足度が70-80%であるのに対して

日本の満足度は39%と、極端に低くなっています。

 

これは補聴器専門店で購入している方に比べて

インターネットで補聴器を購入した方の

満足度がかなり低いことが影響しています。

 

今後はこの点を早急に改善していくことが

補聴器の普及には重要だと思いました。

 

 

続いて国立東京医療センター

臨床研究(感覚器)センター 名誉センター長

加我 君孝先生

 

 

「加齢による難聴の考え方の変遷

〜Shuknechtの研究から補聴器・人工内耳までの半世紀〜」

 

 

Shuknecht(シュクネヒト)の研究で、

ネコの聴力に関係する蝸牛神経を80%切断すると

聴力低下が起こることが判明し

その後ネコの側頭骨病理と聴力検査像との関係

についての研究結果を提示され、

大変興味深い知見でした。

 

その後人工内耳の歴史的変遷についてお話しがあり、

先天性難聴の新生児に対して

二歳から三歳頃に人工内耳を埋め込む手術を行うと

その後の言語発育経過が良くなるという結果でした。

そのため早期に新生児の難聴を発見する必要があります。

 

 

現在行われている新生児聴覚スクリーニングでは

小児科医が実施しており

スクリーニングで難聴の疑いがあると言われて

実際に耳鼻科で検査した結果

本当に先天性難聴と診断される新生児は

約30%程度とのことです。

 

この点は今後の改善を要する検討課題です。

 

 

最後に

国立障害者リハビリテーションセンター病院

耳鼻科医長 石川浩太郎先生

 

 

「補聴器外来での留意事項 適応判断から処方まで」

 

 

補聴器の装着には患者さん本人の

装着する意欲が重要で、家族への指導と

患者さん本人の聞こえの改善を

ともに喜ぶ姿勢を持つ必要があります。

 

また補聴器の調整には

私とも慶應義塾大学の医局で交流のある

済生会宇都宮病院の

新田清一先生による補聴器の処方と

音量調整方法が非常に優れているとの事でした。

 

 

先天性難聴の中には

遺伝性難聴であるUsher(アッシャー)症候群があり

両側性の高度難聴であることから

早期発見の重要性を指摘されていました。

 

 

いずれの先生方の発表ともに

要点がとてもコンパクトにまとめられていて

大変聞き応えがありましたが

非常に充実した講義でした。

 

 

プログラム終了後に

加我君孝先生とゆっくりとお話しして

当院からの紹介患者さんを受け入れていただき

いつも大変お世話になっているお礼を伝え、

今まで補聴器業界に関して

疑問に思っていた点について

先生の貴重なご意見を伺えました。

 

疑問点

 

・補聴器販売店で作った補聴器が合わないということで

来院した患者さんの耳を見ると、

両耳ともに大きな耳垢が詰まっていて

それを除去すると良く聞こえるようになったという

事があり、その様な儲け主義の補聴器業者を

行政指導したり、一般の人にわかるように出来ないか?

 

・世界の潮流では補聴器の有効性が認められているが

日本での普及がまだまだなのは、何が原因で

どのような対策が取られているのか?

 

これに対して加我先生は

 

消費者センターと連携して不良業者の情報を

耳鼻科学会でも把握することや

優良な補聴器業者には ミシュランの☆☆☆ のような

日本耳鼻咽喉科学会による正式な認定書を

発給してはどうかとの考えをお持ちでした。

 

また補聴器の今後の普及に関しては

やはり耳鼻科の中で補聴器相談医の地位を向上させること

補聴器に関する知識量を一般の開業医でも増やしていくこと

高齢者の認知症予防に補聴器装着が有効であることを

耳鼻科学会が社会に対して

今後は積極的にアピールする必要があること

が重要であるとおっしゃっていました。

 

 

いろいろと勉強になった貴重な一日でした。

 

 

これからも難聴でお困りの方にお役に立てるよう

今まで以上に努力したいと思います。