今日は朝から雨で一日不安定な天気でしたね。
梅雨明けはもう少し先のようです。
7月5日の誕生日に、お隣のプライム薬局の方からいただいた花を
受付に飾りました。
とても色鮮やかな花で、院内が明るくなりました。
最近は風邪の後などに嗅覚障害でお困りの方が増えてきています。
臭いを嗅ぐ時に働く嗅神経は
脳の下の部分から前方に伸びて、細かい神経の枝を鼻内に巡らせています。
ヒトは350〜400種類の嗅覚受容体を持っていると言われ
その組み合わせは無限大で、数十万種類の臭いをかぎ分けることが出来ます。
嗅覚障害の原因は大きく3つに分類され、
①気導性嗅覚障害
鼻ポリープや副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などのために
気道から嗅神経まで臭い分子が到達しない場合
②嗅神経性嗅覚障害
嗅神経が障害を受けて働かなくなる状態で、
感冒後にウイルスによる神経障害を生じる場合や
頭部外傷などによる神経の物理的障害によるもの
③中枢性嗅覚障害
脳腫瘍、脳出血、頭部外傷、アルツハイマー病初期など、
臭いを感じ取る脳が障害されている場合
があります。
嗅窩部髄膜腫のMRI撮影(矢印部分)
その他にも薬剤(抗がん剤のテガフール・ウラシルなど)による場合や
長期間の喫煙、有機溶剤の暴露、亜鉛欠乏、加齢の影響なども考えられます。
嗅覚障害を起こす疾患として
好酸球性副鼻腔炎を含む慢性副鼻腔炎の割合が高く、
感冒後嗅覚障害がそれに続いています。
嗅覚障害の治療法として、
副鼻腔炎が原因の場合に対する治療の他に
鼻腔ポリープに対する手術治療も選択肢の一つです。
また漢方の当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、
亜鉛製剤 ステロイド点鼻薬、ビタミン製剤などの治療薬があります。
当帰芍薬散は貧血や更年期障害、めまい、不妊症などに処方される漢方薬です。
嗅覚障害ガイドラインでも推奨されています。
当帰芍薬散単独投与群(89例)は、ステロイド点鼻群(46例)と比べて
治癒率が高かったというデータもあります。
感冒後の嗅覚障害は40-70代の女性に多く、
当帰芍薬散の構成成分が女性ホルモンに何らかの影響を与えている可能性があります。
これらの治療で効果が無い場合には、臭い物質を吸入する
嗅覚のリハビリテーションを行います。
臭いにはいくつか代表的な種類があり、
これらの組み合わせですべての臭いが表現されるとした
1916年にHenningにより提唱された臭いのプリズムです。
2009年、ドイツのドレスデン大学耳鼻咽喉科、Hummelらが
56名の嗅覚障害患者さんに一日に2回、
4種類の臭素(バラ香、ユーカリ香、レモン香、クローブ香)
を12週間嗅ぐリハビリテーションを行いました。
その結果、リハビリテーションを行わなかった対照群と比較して
有意に嗅覚障害が改善していたと報告しました。
実際にMRIを用いた研究では、
嗅覚リハビリテーション後は実施前より
嗅球の体積が増加していたという報告もあります。
嗅覚障害に対する生活指導として、
日常生活で鼻呼吸を意識して過ごすことが重要で、
ほかにもいくつか注意するポイントがあります。
感冒後の嗅覚障害は長期間にわたって症状が続く場合が多く
リハビリテーションにより徐々に回復する可能性があり
あきらめずに試してみる価値はあると思います。
嗅覚の低下や臭いがしないことでお困りの方は、ぜひご相談下さい。