【小林耳鼻咽喉科医院】 世田谷の耳鼻咽喉科 めまい 耳鳴り アレルギー性鼻炎 耳鼻科

漢方の勉強会に参加しました

今日は雨が降り寒い1日になりましたね。

 

 

27日水曜日は漢方の勉強会に参加して来ました。

 

 

会場は東京ドームホテルです。

 

 

最初の講演は、向坂医院 向坂 直哉先生

「フレイル・サルコペニアには漢方?

〜多施設共同臨床研究の結果から〜」

 

 

フレイルとは、

高齢者で生理的な予備能力が低下して

ストレスに対する抵抗力が落ちてしまうことで

要介護状態、生命維持が困難になりやすい状態のことです。

 

人参養栄湯は代表的な補剤で、疲労感を回復し

加齢による筋肉量の低下や

身体能力の低下の予防に有効です。

 

 

高齢者に対する人参養栄湯の効果について発表がありました。

 

65歳以上の高齢者で、体力低下、疲労倦怠、食欲不振

ねあせ、手足の冷え、貧血のうち

少なくとも一つを訴えた36名が対象です。

 

 

人参養栄湯を投与した群とコントロール群で

左右の握力、体重、BMI、筋肉量

体脂肪率、大腿周囲径などの変化につき調べました。

 

 

 

人参養栄湯を半年間内服した群では

コントロール群に比べて筋肉量の変化が少なく

体重減少の抑制に効果的でした。

 

骨格筋は人体で最大の組織であり

体の動きをコントロールする以外に、

蛋白質の貯蔵庫として機能し、

糖の取り込みやエネルギー代謝にも

重要な役割を果たしています。

 

人参養栄湯が骨格筋の減量を防ぐことで

フレイルを予防することが示されました。

 

 

握力の低下と生命予後は関連があることが知られています。

 

イギリスのUK Biobankの登録者50万2628人のうち、

握力の測定を受けていた50万2293人(女性が54%)

を分析対象にした研究では

平均7.1年(範囲は5.3~9.9年)の追跡で、

1万3322人(2.7%)が死亡していました。

 

心血管死亡は3033人(0.6%)、

呼吸器疾患死亡は2026人(0.4%)、

癌死亡は5738人(1.1%)でした。

 

握力が低い人ほど心臓や肺疾患、

悪性腫瘍の発生率が高い事が判明し、

握力の維持にも人参養栄湯が有用であるという結果でした。

 

 

 

 

続いて鹿児島大大学大学院

漢方薬理学講座 乾 明夫先生

「フレイルへの漢方応用

ー 人参養栄湯を中心に ー」

 

 

サルコペニアとは、握力や下肢筋・体幹筋など

全身の筋力低下が起こることで

歩くスピードが遅くなる、杖や手すりが必要になるなど

身体機能の低下が起こることを指します。

 

そのために寝たきりや転倒・骨折などの

リスクが増える状態となります。

 

 

一指し指と親指を足のふくらはぎの一番太い部位に当てて

隙間が出来る場合にはサルコペニアが疑われます。

 

 

 

サルコペニアとフレイルの違いですが、

サルコペニアは筋肉量や筋力の低下による

身体機能の低下であることに対し、

フレイルは身体的だけではなく、

精神・心理的、社会的な衰弱や虚弱を含みます。

 

 

発表では人参養栄湯の薬理作用について

多くのデータが示され詳しい解説がありました。

 

人参養栄湯の構成成分である

人参サポニンのギンセノシドは

疲労、抑鬱の軽減、骨密度の増加、動脈硬化の改善

認知機能の改善、前立腺肥大の抑制効果が知られています。

 

 

 

遠志(おんじ)は、イトヒメハギの根で

中年以降の物忘れの改善や

海馬の神経幹細胞の増殖・分化を促進し、

神経保護作用が認められます。

 

 

五味子(シザンドリン)は骨格筋代謝の重要因子である

PGC-1αを介して疲労を改善し

運動能力を増大させます。

 

さらに内因性エストロジェンシグナリング

を改善することが判明しました。

 

 

グレリンは主として胃内分泌細胞で分泌され

摂食亢進、体重増加、消化管機能調節など

エネルギー代謝調節に関与する摂食促進ペプチドです。

 

 

視床下部の食欲中枢にある

神経ペプチドY(NPY)に作用して神経細胞を賦活化し

シグナル伝達機構を改善します。

 

 

陳皮、茯苓(パキマ酸)、甘草や人参由来成分は、

グレリン代謝に関与し、食欲増進作用を有しています。

 

陳皮(ヘスペリジン・ナリルチン)

神経保護作用を有し、

老化に伴う神経細胞の脱ミエリン化や認知機能を改善します。

 

これらの生薬は、

骨髄の造血系や間葉系幹細胞への刺激作用が知られ、

臓器組織の修復再生に関わるものと考えられます。

 

 

人参養栄湯の効果は実感していましたが、

今回構成成分の作用機序など

かなりの知識を吸収して、大変勉強になりました。

 

これからも積極的に勉強会に参加したいと思います。