【小林耳鼻咽喉科医院】 世田谷の耳鼻咽喉科 めまい 耳鳴り アレルギー性鼻炎 耳鼻科

漢方研究会に参加しました

今日は晴れて秋らしく過ごしやすい一日でしたね。

 

 

26日土曜日は日本耳鼻咽喉科漢方研究会に参加しました。

 

 

場所は東京コンファレンスセンター品川です。

 

 

耳鼻科医で漢方に詳しい先生を中心とした研究会で

興味ある発表が数多くありました。

 

 

 

兵庫医科大学 耳鼻咽喉科

任 智美先生の発表

「当科味覚外来における漢方治療」

 

味覚障害に対する治療は亜鉛製剤が中心となりますが

加齢による味覚障害には、

漢方薬の八味地黄丸の効果が高いという発表でした。

 

また舌痛症に良く使用される漢方は

加味逍遙散(かみしょうようさん)のほか、

舌の乾燥を伴う陰虚では

滋陰至宝湯(じいんしほうとう)があり、

使い分けについての解説を聞き、大変参考になりました。

 

 

竹越耳鼻咽喉科 竹越 哲男先生

「肩こりによる血行動態性椎骨脳底動脈循環不全

(肩こり関連めまい)に対する漢方治療」

 

女性に多い肩こりに関連するめまいについての発表です。

 

 

長時間のパソコン業務は肩こりを誘発します。

 

特に若い女性は低血圧傾向にあります。

 

 

低血圧により脳血流が障害され、めまいを起こしやすくなります。

 

また聴力検査で低音部の難聴を起こしやすく

左右ともに同じような聴力低下が見られます。

 

検査図の向かって右が高音部、左が低音部で

右が○ 左が×ですが、聴力が良いほど上の方に印が付きます。

 

 

脳血流低下による疾患として、

椎骨脳底動脈循環不全 H-VBI

(hemodynamic-VBI)という概念があります。

 

 

 

肩こりによるめまいは

頸部交感神経過緊張によるH-VBIが関与していると考えられます。

 

 

治療は桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)

が効果的で、補中益気湯や釣藤散(ちょうとうさん)

と併用する場合もあります。

 

 

竹越先生主催の漢方研究会に参加してから

肩こりが高度で両側の低音部難聴の方に

桂枝加苓朮附湯を処方し始めましたが、

治療効果が非常に高く驚きました。

 

 

特別講演は

九州歯科大学 生体機能学講座 老年障害者歯科学

柿木 保明先生

「顎・口腔領域と漢方」

 

柿木先生はくも膜下出血で一時は意識不明に陥り

開頭手術で奇跡的に生還されました。

 

発症してすぐは外見的に意識不明でも

音は聞こえている状態でしたが、反応できなかったと言う事です。

 

手術後は気管切開のため発声不可能な状態で

ベットサイドでは本人に聞こえていないと思って

介護、看護スタッフが本音で話す会話の内容から

医療従事者の態度がはっきりとわかり

人間の本質を知ったそうです。

 

発症二日目からは脳浮腫の予防のために

鼻から入れていた管を通して

五苓散と桂枝加苓朮附湯を内服。

回復期の体力回復には葛根湯 葛根加朮附湯、

不眠や不安には抑肝散が有効だったそうです。

 

実体験に基づく漢方の効用のお話しがあり

大変インパクトがありました。

 

 

舌は全身の鏡と言われています。

全身状態の変化が舌の変化として現れます。

 

舌苔の色調は口腔内に生息している細菌の色素などに影響されます。

熱があると黄色くなり、感染症などでは黒色になります。

 

また舌体の色調は血液の状態と、

舌粘膜の色調は粘膜上皮の

再生力と乳頭内の血液循環と関連しています。

鉄欠乏性貧血などでは表面が平滑になります。

 

地図状舌

 

 

心因性疾患やストレスに対する抵抗力が低下した際に見られます。

 

舌苔が厚くなる原因は、

舌表面にある糸状乳頭が長くなり、

そこに剥離細胞や食物残渣が積み重なるためです。

治療は擦過除去するのではなく、

全身状態の改善を図る必要があります。

 

 

歯の知覚過敏は、歯髄腔や歯根膜の内圧が亢進することで

起こりやすく、治療は利水剤である五苓散が有効です。

 

高齢者で寝たきりの場合には

唾液量が減少して舌表面の粘膜が萎縮するために

味覚障害や摂食障害

嚥下障害などが生じやすく、

これらの病態には口腔ケアが有効です。

 

口腔の環境を整えることで誤嚥性肺炎の予防や

全身状態の改善が期待出来ます。

 

口腔ケアにより口内環境が改善した結果

さまざまな症状が回復した症例の提示があり、

大変参考になりました。

 

 

いろいろな知識を吸収できて、大変有意義な会でした。

これからも漢方薬の知識を増やして

外来に生かして行こうと思います。