今日も一日かなり暑かったですね。
最近は認知症の患者さんがかなり増えてきています。
厚労省のデータによると
65歳以上の高齢者における有病率は8~10%程度で、
全国で242万人もの方が罹患していて、85歳では27%にも達します。
認知症の中ではアルツハイマー病、
脳血管性認知症、びまん性レビー小体病の頻度が高く、
全体の75~80%を占めています。
アルツハイマー病では
脳の神経細胞が本来の老化速度よりも早く減ってしまいます。
アミロイドとタウ蛋白と呼ばれる物質が、
脳内の神経細胞に蓄積するために
神経が機能不全に陥ることが原因とされています。
アルツハイマー病にはいくつかの危険因子があります。
遺伝性の家系でない方でも、
持っている遺伝子のタイプが発症のしやすさに関係していることが知られています。
アポリポ蛋白E(ApoE)という遺伝子があります。
ヒトのApoEにはε2、ε3、ε4の3種類がありますが、
ε4のタイプのApoE遺伝子を持っている人は
アルツハイマー病になる危険度が高くなることが知られています。
対照的に、ε2を持っている人は
アルツハイマー病になりにくいことがわかっています。
生活習慣病である糖尿病や高血圧を持っている人、
頭部外傷の既往のある人は
アルツハイマー病になる危険性が高まることが知られています。
アルツハイマー病は40歳代以降広い範囲の年齢で発病しますが、
65歳以上で発症頻度が高くなってきます。
すなわち加齢そのものがアルツハイマー病発症の危険因子です。
脳血管性認知症は
脳梗塞や脳出血によって起こる認知症のことです。
大脳深部の白質繊維の連絡機能が断たれることで認知症症状が発症します。
大脳の表面付近の梗塞に起因する例では、
梗塞巣の容積が100mLを超えると認知症の発現頻度が増加します。
また海馬、視床、尾状核など重要な脳構造に梗塞を生じると、
それが限局性であっても高次脳機能障害をきたすことがあります。
逆流性食道炎や胃潰瘍に処方される
プロトンポンプ阻害剤(PPI)が、
認知機能低下に関係する可能性があることを
ドイツのWilly Gommらの研究者グループが発表しました。
ドイツの公的健康保険制度の記録を元に
2004年から2011年に医療機関を受診した
高齢者73.679人の分析を行いました。
PPIを処方された2950人
(男性652人 女性 2.298人 平均83.8歳)
と、処方されなかった700.729人
(男性184.993人 女性 515.736人 平均83.0歳)
が対象です。
経過中に認知症を発症したのは全体で29.510人で
PPIを内服していた群の認知症発症リスクは
非内服群と比べて1.44倍高かったとの結果でした。
この研究では認知症危険因子のうち調整できなかった要素もあるため
PPI使用と認知症リスクの生物学的因果関係を証明するものではなく
直接的な因果関係を証明するためにはランダム化比較試験が必要です。
今後はPPIを内服しているご高齢の患者さんとご家族に
認知症のリスクがあることを知らせていきたいと思います。