以前読んだアドラーの
はとてもインパクトのある内容でした。
アドラーの教えの続編です。
自己啓発の源流 「アドラー」の教え
前回の会話から時は流れ、
青年は教師となりました。
担任する生徒に対して
「ほめてはいけない。叱ってもいけない」
というアドラーの教えに従った対応をしたところ
生徒は全く言うことを聞かずに
大変困難な状況になっていました。
これに対して哲学者は
子供が問題行動を起こす理由として
①賞賛の要求
②注目換起
③権力争い
④復讐
⑤無能の証明
をあげて解説しています。
①から順に問題の程度が重くなります。
①から③までは
もっと自分を尊重して欲しいという
愛を求める気持ちの表れですが
③権力争いとは親や教師に反抗し
学級の中で英雄になれる行動です。
それがかなわないとわかると
一転して憎しみを求めるようになり
④復讐とは
自分を愛してくれないなら
いっそのこと憎んでくれと言う
憎悪という感情の中で
相手のいやがることを繰り返し
自分に注目して欲しい
という態度となります。
さらにそれが進むと
⑤無能の証明
自分がいかに無能であるかを
あらゆる手段を使い
あからさまな愚者を演じ
自分に何も期待しないでくれ
という段階となります。
そして哲学者は解決方法として
相手を尊敬して、
真摯に対応することを提言します。
「もしも自分がこの人と同じ
心を持っていたらと考える。
そうすればきっと自分も
この人と同じような課題に直面するだろう。
相手の立場を理解し共感することは
他者に寄り添う時の技術であり
態度である。
技術である限りだれでも
身につけることが出来るのです。」
さらに教育者の心構えとして
生徒からの感謝を期待するのではなく
「自立」という大きな目標に
自分は貢献出来たのだという
貢献感に幸せを感じるようにする
ことが大事で
幸福の本質は「貢献感」である
と説きます。
自立とは、
自分の価値を自らが決定すること。
人と違うことに価値を置くのではなく
私であることに価値を置くべきであり
人間の価値は
どんな仕事に従事するかではなく
仕事にどのような態度で取り組むか
によって決まるとしています。
「目の前の人を無条件に信じることから
自分がこの場所にいてもいいのだという
共同体感覚が生まれます。
生徒達に自分を信じて欲しいのなら
まず自分から生徒を信じなればなりません。
そして自分の人生は自分で決定するものと
教えることが大切で
その決定に必要な材料である
知識や経験を提供していくこと
それが教育者のあるべき姿です。
子供達の決断を尊重し、いつでも援助する
用意があることを伝えて見守れば
自分自身で人生を決めることを
学んでいくでしょう。」
世界的なベストセラー作家
愛に必要な勇気とは
「相手を信じる勇気である。」とあります。
また人は意識の上では
愛されないことを恐れているが
無意識の中で愛することを恐れている。
愛すると言う事は何の保証もないのに
行動を起こすことであり、
こちらが愛せばきっと相手の心にも
愛が生まれるだろうという希望に
全面的に自分をゆだねることである。
とフロムは語っています。
哲人は青年に語ります。
「愛を知り、人生の主語が
わたしたちに変わることで
新たなスタートとなります。
自立とは自己中心性からの脱却で
二人から始まった「わたしたち」
は、やがて共同体全体に
そして人類全体にまでその範囲を
広げていくでしょう。
われわれは他者を愛することによってのみ
自己中心性から脱却し、自立を成しえ
共同体感覚にたどり着きます。」
さらに印象的な言葉が続きます。
すべての対人関係は「別れ」
を前提に成り立っています。
われわれは別れるために出会うのです。
全ての出会いは
ただひたすら「最良の別れ」
に向けた不断の努力を傾けることが必要で
いつか別れる日がやってきた時
「この人と出会い、この人とともに
過ごした時間は、間違いではなかった。」
と納得できるように
いまを真剣に生きることが重要です。
最後に哲人と青年は語り合います。
「今こうして「最良の別れ」を
迎えようとしています。
われわれが過ごした時間には
ひとつの後悔もないはずです。
われわれは未来が見えないからこそ
運命の主人になれるのです。」
読み終えてから
今までにない視点から
物事を考えられるようになり
今後の生き方の参考になりました。
共同体感覚の諸相
岸見一郎
アドラーはオーストラリアの心理学者で
1870年ウイーン郊外で生まれます。
第一次世界大戦に軍医として参戦し
戦争のストレスによる
神経症の患者を診察する中で
共同体感覚が重要であることを見いだします。
アドラーの有名な言葉に、
「人は過去に縛られているわけではない。
あなたの描く未来があなたを規定しているのだ。
過去の原因は「解説」にはなっても「解決」にはならないだろう。」
というものがあります。
その人らしさや個性は、
その人がどんな人生を送ってきて、
どんな過去を持っているかということではなく、
未来に何をしたいのか、
どんな目的があるのかによって決まるということです。
アドラーは、「やる気がなくなった」のではない。
「やる気をなくす」という決断を自分でしただけだ。
「変われない」のではない。
「変わらない」という決断を自分でしているだけだ。」
とも述べています。
自分の気持ち、目指すもの次第で
行動も未来も変わっていく
という考え方は、とても参考になります。
特に印象的な言葉は
「課題の分離」です。
対人関係の悩みに直面した際に
相手の課題と自分の課題を分けて考えると
問題が解決しやすくなります。
この本では共同体感覚について
より詳しく解説されており
自己受容
他者信頼
他者貢献
の3つを身につけることが
重要です。
これからも何か困難な場面に
直面した時には
アドラーの言葉を
思い起こして対応していこうと思います。