【小林耳鼻咽喉科医院】 世田谷の耳鼻咽喉科 めまい 耳鳴り アレルギー性鼻炎 耳鼻科

新型コロナウイルス感染症とノーベル医学賞

新型コロナウイルス感染症が流行しています。

 

 

先日も発熱がなく、鼻水が出て鼻がつまると

いう方が来院され、

副鼻腔炎の診断で治療したところ、

三日後に新型コロナウイルス感染が

判明した方がいました。

 

初期には普通のかぜと変わりがないため

診断が難しく、

内服では効果がないため症状が改善せず

経過が長くなりがちです。

 

 

また別の方は喉の痛みで内科を受診し、

抗原検査陰性で投薬後も

症状が続き、当院で診察時には

喉頭に大量の痰が付着していて

食事を摂るのも難しい状況で

大きな病院で入院治療をお願いしようとしましたが

新型コロナウイルス感染症が判明し

自宅療養となりました。

 

 

2023年のノーベル医学賞は

メッセンジャーRNAを用いた

新型コロナウイルス感染の

予防ワクチンの基礎的研究を行った

ハンガリー出身のカタリン・カリコ氏

ペンシルバニア大学の

ドリュー・ワイズマン氏

の二人が受賞しました。

 

 

このワクチンは、

従来の無毒化あるいは弱毒化した病原体や

その一部を接種するものと異なり、

mRNA(メッセンジャーRNA)を用いた

全く新しい作用機序に基づくワクチンです。

 

mRNAは細胞の核に存在し

遺伝情報を含むDNAからコピーされて

産生される物質です。

 

mRNAワクチンは、

病原体(新型コロナウイルスなど)

を構成するタンパク質の遺伝情報を有する

mRNAを接種するものです。

 

接種されたmRNAワクチンを

取り込んだ細胞は、その病原体を構成する

タンパク質を大量に作りはじめます。

 

免疫システムはこのタンパク質を

異物として認識し、

将来の感染に備えて免疫を獲得します。

 

本技術の応用範囲は

他のウイルスに対するワクチン開発や

がん治療など非常に幅広く、

世界的に大きな功績となっています。

 

 

京都大学の山中伸弥氏により

初めて作製されたiPS細胞は、

細胞のリプログラミングに関わる

4つの遺伝子(Oct4、Sox2、Klf4、c-Myc:山中因子)を、

レトロウイルスベクターと呼ばれる

遺伝子の運び屋を用いて

線維芽細胞に遺伝子を導入する方法です。

 

しかし、この技術では

導入した遺伝子が核内の

DNAに組み込まれてしまうことがあり、

このうち発がんに関わる遺伝子が発現することで、

腫瘍が発生するリスクが懸念されていました。

 

その後、iPS細胞作製のための

様々な遺伝子導入法が開発されていますが、

その1つにmRNAを用いた技術

(mRNAリプログラミング法)があります。

 

mRNAリプログラミング法は、

mRNAワクチンと同様に、

細胞の初期化因子を作るための

遺伝情報を有するmRNAを細胞に導入し、

目的のタンパク質を発現させることで

iPS細胞を作製するもので

mRNAは核の中に入らないため

元のDNAに変異を生じさせない点、

mRNAは速やかに消失するため

iPS細胞に残らない点より、

腫瘍の発生リスクは

ほぼないという大きな特徴があります。

 

 

ワクチン開発の記事

に詳細が記載されているように

一時は行き詰まっていた研究を

最終的に成功させた二人の功績は

非常に大きなものがあります。

 

これからも医学の発展に関する

情報を発信したいと思います。