今日は時々雨が降り不安定な天気になりましたね。
昨日は午後から東京メニエール病カンファレンスに参加しました。
耳鼻咽喉科の中でめまいを専門に研究している先生方の集まりです。
一般演題では、めまいメニエール病センター 高橋 正紘先生の
「激増しつつある浮遊耳石症(浮遊耳石由来のめまい・耳症状)」
の発表が大変興味深かったです。
バランスを感じる内耳には、三半規管と耳石器があります。
三半規管の中にある内リンパ液が動くとクプラの位置が変わり
感覚細胞が刺激されて身体の位置情報が脳に送られます。
耳石器には球形嚢と卵形嚢があり、
球形嚢はエレベーターの昇降など垂直方向の感覚を、
卵形嚢は電車や車の加速度など水平方向の感覚を受容する働きがあります。
良性発作性頭位めまい症は、耳石器からはがれた耳石が
卵形嚢から半規管に入るためにめまいが起こり
耳鳴や難聴などは起こらないとされてきました。
高橋先生によると、球形嚢の再結合管に入った微小耳石が蝸牛管を塞いで
蝸牛の働きに影響し、難聴、耳鳴などの症状を発生させるというお話しでした。
実際に運動療法と生活指導でめまい、難聴が劇的に改善した症例を提示して、
メニエール病と誤診されている例が多いという発表は、非常にインパクトがありました。
特別講演は
新潟大学 大学院歯科総合研究科
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野教授 堀井 新先生
「持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD);その診断基準とメニエール病との鑑別」
メニエール病ではめまい発作を繰り返すために不安症を併発しやすく、
内耳性めまいに対する内服治療のみで症状が改善しない時に、
不安症を治療することでめまいが良くなる場合があります。
めまい患者さんに合併する精神疾患としては不安症とうつ病があります。
心因性のめまいの中には姿勢で誘発されるめまいがあり、
Persistent Postural – Perceptual Dizziness (PPPD) という概念が提唱されています。
PPPDは3ヶ月以上の浮動感、不安定感など慢性ふらつきを呈し、
体動や動いているものを見るなどの視覚刺激で誘発される疾患で、
立位で症状が悪化する特徴があります。
これまでめまいを訴えて検査を行い、どこにも異常が見つからない場合には
めまい症という診断名となっていましたが、
その中にPPPDが相当数含まれていると思われます。
PPPDの治療として、
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の内服、
前庭リハビリテーション、認知行動療法があります。
SSRIは不安症やうつ病に使う薬ですが、
PPPDでは不安やうつの合併がなくても効果があります。
前庭リハビリテーションは、バランストレーニングや
棚の上、床の物を取る、振り向くといった動作による頭部、頸部の運動です。
バランスの維持には視覚、前庭覚、深部覚が関与しています。
三半規管など前庭覚の異常が起こると、
他の視覚、深部覚がバランス維持のため通常より過剰に働くようになりますが、
めまいが治まると視覚、深部覚の働きも元に戻ります。
その際に視覚の働きが戻らないと、動いている物を見る時に過剰に反応したり
深部覚の働きが更新したままでは急な身体の動きが刺激となり、
バランスが取りにくくなるという理論が提唱されています。
めまいに関するいろいろな知識を吸収できて有意義な会でした。
これからも積極的に勉強会に参加したいと思います。