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【小林耳鼻咽喉科医院】 世田谷の耳鼻咽喉科 めまい 耳鳴り アレルギー性鼻炎 耳鼻科

漢方の勉強会に参加しました

今日は台風の影響で交通機関も運行が遅れて

大変な1日になりましたね。

午後にはかなりの猛暑になりました。

 

 

7日土曜日は、診療後に漢方の勉強会に参加して来ました。

 

 

場所は東京マリオットホテルです。

 

 

フレイル漢方薬理研究会

 

高齢になると生理的予備能力が低下し

ストレスに対する抵抗力が減少することで生活機能が障害され

要介護状態、生命維持が困難に陥りやすい状態となります。

この状態をフレイルと呼びます。

 

 

フレイルに対する人参養栄湯の作用機序と

臨床応用についての発表です。

 

「クロトーマウスの老化表現型に対する人参養栄湯の影響」

クラシエ漢方研究所 高橋 隆二先生

 

ヒトの病的老化モデルである

クロトーマウスは非常に小さく、寿命は50日程度です。

 

このマウスに人参養栄湯を投与した結果、

血中のリンパ球であるT細胞、B細胞、NK細胞などの

加齢による低下を抑制し、30%近い延命効果をもたらしました。

 

 

「人参養栄湯による食欲中枢活性化と摂食・体重低下の改善」

関西電力医学研究所 総合生理学研究センター長 矢田 俊彦先生

 

 

悪性黒色腫(メラノーマ)接種マウスでは

体重、骨格筋の量ともに減少します。

 

 

この状態のマウスに人参養栄湯を投与した研究では、

体重減少、骨格筋の減量ともに抑制されて、

いずれにおいても人参養栄湯の効果が示されました。

 

 

「がんに見られる痩せに対する人参養栄湯の効果」

名古屋市立大学 薬学研究科

大澤 匡弘先生

 

 

人の細胞はグルコースを燃料としていますが

解糖系から供給されるピルビン酸の多くは、

ミトコンドリアに入って代謝されます。

 

癌細胞ではミトコンドリアとは離れて、

乳酸脱水素酵素 (LDH) の働きによって乳酸を生成します。

 

乳酸の産生は、通常酸素レベルが低い時の

嫌気条件下に限られますが、

癌細胞は酸素が多くある時でも

グルコースを乳酸の生成に向けています。

 

これを「好気的な解糖」あるいは

Warburg(ワールブルク)効果と呼びます。

 

癌細胞が通常の細胞と異なる代謝を行っていることは、

Otto Warburg によって 1924 年に報告され、

これがワールブルク効果という名前の由来になっています。

 

 

体重が減少していた癌患者さんに人参養栄湯を投与すると、

長期的に体重の回復が見られました。

 

癌をわずらっている状態でも人参養栄湯を服用することで

生活の質が改善する傾向があります。

 

 

「高齢者の転倒に及ぼす人参養栄湯の影響」

湘南慶育病院 脳神経センター長

寺山 靖夫先生

 

日本老年医学界では、75歳以上を高齢者としています。

 

高齢者では多くの薬剤を内服している事が多く

5~6種類以上の内服薬の服用で転倒する頻度が上昇しています。

 

 

 

脳卒中では日中動かないことで

筋力が低下し、歩行速度も遅いため

活動量が極端に減少します。

 

 

 

運動が制限されると、ロコモティブシンドロームが起こります。

 

 

高齢者に人参養栄湯を投与し

転倒の回数を投与前と比較したところ、

明らかに転倒回数が減っていました。

 

転倒した結果動けなくなると要介護状態となりやすく

人参養栄湯がその予防に効果的と考えられます。

 

 

 

「COPD患者のフレイルに対する人参養栄湯の臨床応用と考察」

昭和大学医学部 呼吸器・アレルギー内科 相良 博典先生

 

呼吸器疾患にかかっている場合、かかっていない人に比べ

フレイルになりやすくなるリスクが1.42倍

さらに貧血が加わると5.57倍となります。

 

喫煙者でフレイルの方は閉塞性肺疾患

(chronic obstructivepulmonary disease ; COPD)

となりやすく、肺胞の炎症が長引くと肺気腫を起こします。

 

 

COPDでは咳、喘鳴、呼吸困難が起こりますが

患者さんに人参養栄湯を投与した結果

息切れや全身倦怠感、食欲不振、

不眠などの症状が明らかに改善し、

血液検査でアルブミン値

NK細胞の活性上昇が見られました。

 

呼吸器症状や不眠に効果があった背景として

人参養栄湯に含まれる陳皮、

五味子(ごみし)遠志(おんじ)、白朮(びゃくじゅつ)

などの成分が効果を発揮したと考えられます。

 

 

特に陳皮はストレス応答機構としての

セロトニン(5-HT)-コルチコトロピン放出因子(CRF)系の

活性化を抑える働きがあり、不眠に対して有効と思われます。

 

 

特別講演は

Garvan Institute of  Medical Research

Herbert Herzog 教授

 

 

NPYシステムと糖代謝に関する発表です。

 

NPY(ニューロペプチドY)は摂食促進作用のある物質です。

 

 

正常人では食後にインシュリンを生産し、

視床下部に摂食停止シグナルを送ります。

 

空腹時には低血糖などの情報が

視床下部弓状核に存在する

NPY/AgRP(Agouti related peptide)ニューロンを

活性化することで食欲が作り出されます。

 

NPY/AgRPニューロンを刺激する唯一のホルモンは

胃で産生されるグレリンです。

 

 

加齢によってNPY/AgRPニューロンの活性自体が低下し、

加えてこのニューロンに作用して活動を上げる

末梢のグレリンの分泌や作用が低下することで

さらにNPY/AgRPニューロンの活性が低下し、

二重に食欲の低下が起こります。

 

 

NPY/AgRPニューロンは食欲促進系の神経回路を作動するだけでなく、

食欲抑制系の神経回路を抑制していますが、

そのブレーキが十分にかかりません。

 

このように高齢者では食欲促進系が低下し

食欲抑制系が上昇することによって食欲不振が起こります。

 

 

視床下部弓状核から単離したニューロンの

細胞内Caイオン濃度([Ca2+]i)を指標に検討した結果、

免疫染色によって、このニューロンはNPYを発現していたことから、

人参養栄湯はグレリン応答性の

NPYニューロンを活性化することがわかりました。

 

 

またNPYニューロン全体の約32%をも活性化することが確認されました。

 

 

 

 

人参養栄湯には甘草が含まれているので、

低カリウム血症によるミオパチーや

偽アルドステロン症に注意が必要です。

 

 

特に高齢者,痩せている方や女性患者さんの場合は

投与量を考慮する必要があります。

 

 

多くの演題を聞いて大変勉強になりました。

これからも積極的に勉強会に参加したいと思います。