今日は比較的暑さがおだやかな一日でしたね。
全身の筋肉の痛みを来す病気で、繊維筋痛症という疾患があります。
関節、筋肉、腱などの痛みとこわばりを主症状とし、
身体の明確な部位に圧痛を認めます。
中年以降の女性に好発するリウマチと似た病気で
強い疲労・倦怠感、眼や口の乾燥感、記憶障害、
不眠や抑うつ気分など多彩な訴えがみられます。
厚生労働省の調査研究班による住民調査によって
線維筋痛症患者数は一般人口当たり1.7%、約200万人と推計されます。
この病気の疼痛は、帯状疱疹後の神経痛、
糖尿病性神経障害時の疼痛やがん性疼痛のような
神経障害性(痛み情報を伝達する神経経路の障害)疼痛であり、
また脳における痛みの情報の処理に障害のある中枢性疼痛です。
痛み刺激の伝達路(疼痛知覚神経)の
過剰興奮(車のアクセルの踏み込み状態)と
痛みを脳が認識した時に反応する痛みを抑える経路(下行疼痛抑制経路)
の機能不全(車のブレーキが効かない状態)であり、
いわば車のアクセルが踏み込まれ、ブレーキの効かない暴走状態です。
診断は、3ヶ月以上続く慢性的な疼痛に加えて、
特徴的身体の部位18ヶ所のうち、11ヶ所以上に
4kgの力で押した際の圧痛点を確認することから判定します。
治療はアクセルを戻す(痛み神経の過剰興奮を抑える)薬剤や
ブレーキ機能を高める(下行性疼痛抑制系の賦活)薬剤が使用されます。
セロトニン選択的再取込阻害薬(SSRI)、
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
ノルアドレナリン作動性選択的セロトニン作動薬(NaSSA)
などが使用されます。
抗うつ薬は疼痛の下行抑制系を賦活化(ブレーキ作用の強化)して
痛みの緩和が期待されます。
抗けいれん薬であるガバペンチン(ガバペン)、
プレガバリン(リリカ)などの効果が報告されており、
薬物療法の第一選択薬とされています。
耳鼻科関連のめまいや耳鳴などの症状でお困りの方が
繊維筋痛症の場合もあることから、
今後も注意して診療していきたいと思います。